第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
目を閉じて、優しくも熱い温もりに流されていた。
安心感さえ覚えてしまう自分が情けなく思えて、気恥ずかしさに頬が火照る。
唇が離れた感覚に目を開けると、ジュダルが面白そうに笑っていた。
「おまえ、キスは嫌がんねーのな」
言われて、頬がさらに赤らむのを感じた。
結局、ジュダルのペースに巻き込まれていて悔しくなる。
部屋の外から近づいてくる足音が聞こえてきた。歩調のリズムですぐに知った者だとわかる。
「お迎え、来たみたいだよ」
「みたいだな……」
面倒くさそうに言ったジュダルの表情が、少し曇っていることに気づいて胸が疼いた。
── また、そういう顔して……。
そんな寂しそうな顔を見てしまったら、不安になるのに。
ジュダルが見つめた扉の方を見ると、ちょうど従者の影がうっすらと、部屋の端にある窓辺から現れているところだった。
「あいつに見せつけてやろうか? 」
耳に響いた声に驚いてジュダルに視線を戻したとたん、にやりと悪戯な笑みを浮かべる彼が近づいてきて目を見張る。
瞬く間もなく、キスされた。
「神官殿、お迎えに上がりました」
低い男の声が部屋に響く。
声が聞こえているはずのジュダルは何も言わない。
声を出そうとして、塞ぐように差し込まれた熱いものに絡め取られ、答えるつもりがないのだと気づく。
力をこめてジュダルの肩を押したけれど、頭を後ろで支え持たれ、動きを封じるように重ねた唇を押し付けられた。
喘ぐことさえ許さないような深いキスをされ、息苦しさを感じる。