第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
絡んで指を締め付けた髪紐を見つめて、胸にわだかまる思いから意識を逸らすように指を引き抜くと、波打つように髪紐の形状が歪んだ。
思い描いた形と違って、眉間にしわが寄る。
気に入らない歪みを直すように、髪の束に巻きつけて結び目を作った。
「…………昨日の夜も……、したかったから、だけだったの……? 」
言葉に迷いながら、たどたどしくハイリアが言うと、一瞬の沈黙のあとジュダルは吹きだした。
「な、なによ! こっちは冗談じゃ……! 」
真剣に聞いたのに、可笑しそうに笑い声を上げるジュダルに苛立ち、ハイリアは顔を真っ赤にして声を張り上げた。
「やっぱおもしれぇーな、おまえは! そうだって言ったら、どうするんだよ? 」
ためらいもなく問いかけてきたジュダルに動揺して、胸がずきんと痛んだ。
試すような赤い眼差しが面白そうに笑っている。
「そんなの……、嫌に決まって……! 」
こちらの反応を楽しむような視線が突き刺さり、不安をかき乱した。
「本気で言って……? 」
じんわりと瞳が潤むのを感じ、表情がこわばって笑えなくなると、ジュダルの口元がつり上がった。
「バーカ、勝手に勘違いするんじゃねーよ。おまえは特別だって言っただろ? おまえじゃなきゃしなかったって言えば満足か? 」
にやりと笑みを浮かべたジュダルの手が目の前に伸びてきて、彼の手の動きが戻っていることを知る。
カサついた包帯の感触と温もりに、頬を包まれた。
「ったく、くだらねーことばっか言わせやがって……。おまえみたいなやつに気圧されたと思うと、馬鹿馬鹿しいぜ……」
呆れた口調でジュダルは言って、柔らかな笑みを浮かべた。
「安心しろ、おまえは最後まで面倒見てやるからよ」
「……? それってどういう……」
すべてを問う前に、重ねられた唇で声が閉ざされた。
誤魔化された気がして納得できないのに、柔らかな感触に乱れた気持ちが和らいでいく。