第8章 バルバッドへ
「わかった……、じゃあ、私も『アリババくん』捜しを手伝うわ」
「本当かい!? 」
ハイリアの言葉に、アラジンが目を輝かせた。
「いいのですか? ハイリアさんは、シンドリアへ急いでいるのではないのですか? 」
モルジアナが心配そうに言った。
確かに、急いではいるのだけれど、もうバルバッドまでやって来れたのだ。あとは船に乗るだけ。
だったら、少しくらいシンドリアに行くのが遅れたって、大した障害にはならないだろう。
「大丈夫、少しくらい行くのが遅れても変わらないわ。困っている友達を放っておけないしね! 」
とにかく、危うい二人の友人を、そのまま野放しにして、危ない目に合わせる事だけはしたくなかった。
「わーい! よろしくね、ハイリアおねぇさん! 」
アラジンが喜んで、ハイリアの手を握ってぶんぶんと手を振った。
とたんに、彼の周りに真っ白なルフが溢れ出て、ハイリアはその光に目を奪われた。
喜びを感じたり、誰かが強い決意をしたり、感情が溢れた時に、白いルフは溢れ出る。
何度も見慣れた光景なのに、アラジンの周りはやっぱり他の人とは違う。
彼の周りには常にルフがいる。だから、喜びでルフが溢れて出るその光も、何倍も煌めいて綺麗だった。
鳥のような鳴き声を上げながら、アラジンの周りを飛び交ったルフを見つめていると、ふいにアラジンと目があった。
びっくりした。このルフに気づく人は少ないから。
「おねえさんにも、ルフが見えるのかい? 」
どうやらアラジンにも見えるらしい。
「……うん。綺麗だからつい目がいっちゃうんだ」
「ルフ……ですか? 」
モルジアナは、眼を細めてじっと辺りを見渡した。
その彼女の周辺を、ルフがいたずらにいくつも飛んだのだけれど、モルジアナは気づいていない。