第8章 バルバッドへ
「そういえば、バルバッドには二人がいうアリババ君がいるんだよね? 二人の話を聞いてたら、私も会ってみたくなっちゃった! 」
迷宮攻略者で、モルジアナの恩人。財宝のほとんどを奴隷の解放に使ったらしい。
アラジンにきけば、獰猛な砂漠ヒヤシンスから人々を守ったこともあるという。
優しく、人情味に溢れ、頼りがいがあるだけでなく、きっと知力、体力共に優れた素晴らしい人に違いない。
「じゃあ、バルバッドでアリババくんが見つかったら、おねぇさんに紹介するよ!」
アラジンがにっこりと笑って言った。
彼が不思議なことを言ったので、ハイリアはふと疑問に思った。
『見つかったら』とはどういうことなのだろうか。まさか、アリババに会いに行くといいながら、彼の居場所を知らないとでもいうのだろうか。
「ありがとう……。ところでアラジン、アリババ君って、バルバッドのどの辺りに住んでいるの? 」
「わからないよ。これから捜すんだ! 」
当たり前のように言ったアラジンをみて、ハイリアは言葉を失った。
バルバッドは大陸と島国からなる大国家だ。
そんな中からたった一人の人間を捜し出そうだなんて、しかも、アラジンとモルジアナの二人だけで捜そうとしているなんて、無謀すぎる。
それなのに、アラジンは情報がないことを気にする様子もないし、モルジアナも見つかることを信じて疑わない。
こんな二人を野放しにしたら、いくら再会を望んでいたって、きっといつまでたってもアリババは見つからないだろう。
「ちょっと待って、本気なの?! 情報もないのに……、国で集めたって見つかるかどうか……」
バルバッドは内紛で荒れていると聞くし、見通しのたたない状況になりかねない。
「大丈夫だよ、きっとアリババくんなら、すぐに見つかる。そんな気がするんだ」
「アリババさんが、バルバッドに行くと伝言を残して下さったのです。ですから、きっと街に行けばわかるのだと思います」
ハイリアの心配をよそに、二人はなぜか自信があるようだった。
何の情報もなしに、無防備に旅立つと、どういう恐ろしさが待っているかは、ハイリアが痛いほどに知っていることだった。
だから、この二人を見ていると、なんだか昔の自分を見ているようで、放っておけない気分になった。