第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
「私もやり過ぎたから、ごめんね……。しびれは少しずつ取れるだろうけど……、まだ痛む? 」
「……たいしたことねーよ」
照れくさそうに目を逸らしたままジュダルが言った。
手に取った彼の指が、軽くこちらの手を握ってきたのがわかり、少しほっとした。
「でもね、お願いだから、さっきみたいに無理矢理せまってくるようなことはやめてよね……? あんなのおかしいわよ……」
ジュダルを見つめて言ったとたん、なぜか彼の表情が固まった。
眉間にしわを寄せ、物言いたげにこちらをじーっと見つめてきたジュダルに困惑する。
「…………おまえさぁ、それ、本気で言ってるんだよな? 」
「当たり前でしょ。こんなの嘘ついてどうするのよ……? 」
間違ったことなんて何も言っていないのに、呆れた様子でジュダルにため息をつかれた。
「やっぱりおまえは、考えが足りねーよ……」
「な、何よ?! 変な事なんて言ってないでしょ!? 」
「抜けてんだよ、おまえは! おまえは、ちげぇーと思ってるかもしれねぇーけどな、あれだけその気にさせる反応しておいて、煽ってねーっていうなら無自覚にも程があるバカなんだよ」
「バ、バカっですって!? 朝っぱらから、あんなことしてきて、押し倒してくるジュダルがどうかしてるんじゃない! 反省してないの!? 」
「あのなぁ……、そんなもん朝とか、夜とか関係ねーんだよ。あんだけ色目使って、そそる声出されれば、手ぇー出したくなるもんなんだ! 誘ってる風にしか見えねーよ」
「なにそれ、信じられない!? 」
とんでもない言い訳に、ハイリアは思わず声を張り上げた。
「おまえよぉ、男なんてそんなもんだぜ? 状況考えて相手できると思ってんなら、とんだ勘違いだ。隙があれば迫りたくもなるんだよ。わかってねーおまえがガキなんだ! 」
呆れ果てた様子でジュダルはため息をついた。
「な、なによ……、じゃあ、私に隙があるから悪いっていうの!? 」
「はっきり言って、おまえは隙だらけだ。自覚できねーなら好きにさせてもらうぜー? 」
にやりとジュダルに笑みを浮かべられて、ハイリアは頬を真っ赤に染め上げた。