第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
「いってぇえええ!! ふざけんなっ! 言いたいことがあるなら、言えばいいだろ! 」
怒鳴り騒ぐジュダルの声を聞きながら、無視を決め込んで包帯を巻いた。
手首から腕の方へと転がる白い束は、とても素直に螺旋状に形を描きながら傷痕を覆っていく。
目の前の神官とは大違いだと思った。
「聞いてんのか、ハイリア! 」
黙り込んで白い帯を見つめていると、こちらが反応を示さないことが気に入らないのか、どうにか動かそうとしたらしいジュダルの腕の筋が、ぴくりと動いたのを支える手に感じた。
彼の手に目を向けると、包帯を巻き終えた彼の指先が、こちらを掴もうと鈍く曲がり伸びているのが見えた。
けれど、腕を上げることがまだ上手くできないようで、結局それ以上の動きはない。
力が入らないジュダルの手は重くだらけていて、包帯を巻く自分の手の動きにされるがままだ。
「くっそ! まだ手が痺れて動かねぇ……。すぐ力技にでやがって! 」
思い通りにならないせいか、よけいにイライラとし始めたジュダルの声が響いてきた。
「おい、ハイリア! 」
「…………」
「黙ってねーで答えろ! 」
「…………」
「いつまでも、無視してるんじゃねーよ! 」
「…………」
「いい加減、こっち向け! 」
「…………」
「ハイリア! 」
「……うるさいっ!! 」
いつまでもやかましい声に苛立ちを覚えて、ハイリアは声を荒立てた。