第8章 バルバッドへ
「私は、シンドリアに定住しようかと思っているの」
「移住されるのですか? 」
「うん、私は東の小さな村で生まれたんだけど、幼い頃にキャラバンに引き取られてから、ずっと、街を転々としながら、商人の一団で生活してきたの。
キャラバン暮らしも嫌いじゃないけれど、やっぱり安定した場所に住みたいと思って……」
嘘は言っていない。けれど、やっぱり物悲しい感じがした。
昔を思い出してしまうせい、なのかもしれないけれど。
「シンドリアってどんな国なんだい? 」
アラジンが目を輝かせながら聞いてきた。みれば、モルジアナもよくわかっていない表情をしている。
結構、有名なはずなのだけれど、二人とも知らないようだった。
「南の方の島国よ。小さな国だけど、気候も暖かいし、暮らす人達も温かいと聞くわ。七海の覇王と呼ばれる、強い王様が治める国なの」
「強いのですか……」
国の特徴よりも、なぜか強い王様というところに、モルジアナが関心を示すから、なんだかおかしかった。
「おねぇさんは、その王様に会いにいくのかい? 」
笑顔でアラジンが、とんでもないことを言い出したから驚いた。
「そんな……、私みたいな一般人が、簡単に王様に会うことなんてできないよ。ただ、すごい人だと聞くし、会ってみたいっていう気持ちはあるかな」
「会えるといいですね! 」
「そうだね、会えたら色々話してみたいかな……」
そんな機会、きっとないのだろうなと思いながら、ハイリアは微笑んだ。