第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
「ったく、朝になったとたん態度を変えやがって……。昨日はあんなに素直に……」
「もう、そういう話はやめて! 」
恥ずかしくて思わず声を張り上げると、後ろでジュダルが面白そうにくっくっと笑っていた。
ようやく着替え始めたらしい物音が聞こえて、ほっとする。
すっかり熱くなってしまった頬を冷ますために、少し冷たい両手で押さえながら深呼吸を繰り返すと、乱れていた気持ちがどうにか落ち着きを取り戻していった。
── なんで、そんなに余裕そうなのよ……。
一人だけ騒いでいるように感じて、なんだか複雑な気分だった。
鼓動がおさまってきたのを感じながら息をつくと、急に身体が後ろへ強く引かれてハイリアは目を丸くした。
お腹のあたりに絡んでいるジュダルの腕で、抱きつかれていることに気づく。
「ちょっ……! ジュダルっ! 」
「そんなに嫌がんなよ。俺だって傷つくぜー? 」
着替え終わったらしいジュダルが、妙に甘ったるい声を出して言った。
背中に感じる温もりに、せっかく落ち着いていた鼓動が跳ね上がり、頬がまた火照っていく。
「おまえよぉ、そんな色気のねー服より、昨日みてぇな方が似合ってたぞ」
「……っ! こういう服の方が、動きやすくていいの! 」
慣れないことを言われて、恥ずかしかった。
「まあ、いいけどな。おまえが何を着ようと、抱き心地は変わんねーし」
腹部に絡むジュダルの腕が、強く抱き寄せてきて困った。
なんだかやけに身体を密着させてくる。
「ねぇ……、くっつきすぎ……」
「いいじゃねーか。もっとくっついても俺はいいんだぜー? 」
「バカなこと言わないで! 」
「バカなことなんて言ってねーしな」
熱い吐息と共に、耳にぬめりのある感触が当たってきて戸惑った。