第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
ジュダルの顔をじっと見ているのは恥ずかしくて、自然と上半身に目がいったが、彼の体つきがはっきりと見えて、余計に頬が火照るのを感じた。
こんなに身体が大きかっただろうか。
一見、華奢にも見える鍛えられた体つきは、筋がはっきりとしていて自分の体格とは全然違う。
筋張った腕も、幅の広い肩も、三つ編みがかかる大きな背中も、形は同じはずなのに一緒じゃなくて、背の高さが違うだけでなく、つくりが異なっているのだとわかる。
── 普段はどっちが子どもかもわからないのに、見た目だけは大人っぽくて……。
持ってきた服に腕を伸ばしたジュダルの手が迫り、彼の身体が近づいたとたん、鼓動が跳ね上がるのを感じた。
── 大きな手……、なんでこんなに、私と違うんだろう……。
恥ずかしいけれど愛おしいような、不思議な気分になる中、彼の顔までが急激に近づいてきて、ハイリアは顔を真っ赤にして身を固めた。
「お、は、よ、う」
わざとらしく挨拶をされ、にやりと笑われた。
「お、おはよう、ございます……」
「なんで敬語なんだよ? 」
可笑しそうに笑いだしたジュダルが見えて、赤らんだ頬がさらに熱をもち、鼓動が落ち着かなくなった。
余裕がないのは自分だけのようで、なんだか悔しくも感じた。
羞恥心に耐えられなくなり目を逸らすと、ジュダルに顎を引かれて視線が合うように直される。
「だー、かー、ら、おまえは、何回言えばわかるんだー? 俺から目を逸らすんじゃねーよ。なんかやましいことでもあるのか? 」
どこか威圧的に感じる赤い双眸に見つめられて、気恥ずかしさと後ろめたさで胸の奥が疼く。
「……ない、けど」
「だったら、俺の側にいる時は、ちゃんと俺を見ろ」
側にいるのに視線を逸らすことなんて許さないと、赤い瞳が言っていた。
自分勝手な思いで、ジュダルを利用したまま側にいることを、見透かされてしまいそうで恐かった。
「……わかったから、早く着替えて! そんな恰好をしていたら誰だって目を逸らすわよ! 」
複雑に絡む落ち着かない気持ちを紛らわせるように、ハイリアは真っ赤な顔でジュダルの手を振り払うと、彼に背中を向けた。