第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
「なんだ、その動きは? 間抜けにしか見えねーぞ……」
「ほっといてよ! 」
「バカなことしてねーでこっち向けよ。どうやってここまで持ってくる気だ? 」
「わかってるってば! 」
急かすジュダルの声を鬱陶しく思いながら、彼の服を手に取ると、ハイリアは覚悟を決めて振り返った。
が、すぐに裸体の状態で寝台に座り込むジュダルの姿が見えて、前を向いていられなくなる。
頬が熱くなり、鼓動が速まった。
どうしようか困ったあげく、寝台から顔を背けて前へと歩み出した。
カチコチと硬い動きをしながら、彼が手を伸ばせば届くギリギリの位置まで距離をつめる。
目線を部屋の隅に向けたまま、ハイリアは腕だけを思いっきり伸ばして、ジュダルに服を差し出した。
「はい、服! 」
「届かねーよ」
手も伸ばさずに、ジュダルが言った。
絶対、手が届くはずである。にやにやとわざとらしい笑みを浮かべている、ジュダルの姿が見えるようだった。
苛立ちを覚えながら、ハイリアはもう一歩だけ彼の方へと足を踏み出した。
「ほら、これで届くでしょ! 」
「まだ届かねーなあ……。ちゃんと側まで来てわたせよ」
── もう、なんでそういう意地悪ばっかり……!
羞恥心を忘れさせるように、ジュダルが座る側まで一気に突き進むと、ハイリアは視界の端に見える肌色に服を突き出した。
「はい! 」
「もっとちゃんと手渡せ。おまえは、人に物を渡す時に顔も見れねーのか? 」
「……っ! わかったわよ、これでいいでしょ! 」
勢いよく前へ顔を向けると、やはりジュダルはこちらを面白がるような笑みを浮かべていた。
ほとんどすべてが見えているせいで、どこに目を向けていいかわからなくなる。