第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
彼の部屋の匂いがたちこめたとたん、別の意味で落ち着かない気持ちになり、頬が火照った。
ジュダルを起こしに来ることなんて、いつもの日課だというのに気恥ずかしさを感じる。
── なんか、初めて来たみたい……。
速まる鼓動に戸惑いながら、気持ちを誤魔化すように、ずかずかと部屋の中に入り込んで寝台を見た瞬間、ハイリアは固まった。
絶対、まだ起きていないと思ったジュダルが起きていた。
同じように驚き固まっているジュダルは、乱れほつれた長い三つ編みを肩に絡ませ、肌を露わにして寝台に座り込んでいる。
膝元にかかる掛物以外、何もまとっていないその姿にハイリアは顔を真っ赤に染め上げた。
「うわぁあ、ごめん!! 」
慌てて回れ右して扉へ向かう。
「おい、待て! 勝手に出て行くな! 」
ジュダルに呼び止められて足を止めたが、どうしていいかわからない。
背を向けたまま、その場で動けなくなった。
「だ、だ、だって……、ジュダル……、は、はだか……! 」
「なんだよ、昨日さんざん見ただろ? 」
「そんなこと言われたって……! 」
そんなの見慣れるものではない。明るい場所となれば尚更だ。
「ったく、遠慮もなしに入って来たくせに、恥じらいやがって。おまえは、いつもそうやって起こしに来てたんだな……」
呆れたようなジュダルの声が聞こえて、頬が熱くなった。
「ジュダル、いっつも起きてないから……! 」
「起きてなければ、ノックもしねーでいいのかよ? 」
「…………すみません」
「まーいいや。ちょうどいいから着替えを手伝えよ。そのへんに服あるだろ? こっちに持ってきてくれよ」
言われて視線を動かすと、鏡台の近くに綺麗に折りたたまれた彼の服を見つけた。
仕方なく後ろにいるジュダルの姿を見ないように、ハイリアはそろそろと足を横に動かしながら、彼の服が置いてある場所へと向かう。