第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
「すみません……」
謝りながらゆっくりと顔を上げると、青舜と目が合い、ため息をつかれた。
ただ謝ることしかできない自分が情けなく感じて、胸が痛んだ。
「緊張されて剣筋が荒くなっているかと思えば、今度は我を忘れて過剰攻撃ですか? 気持ちが安定していませんね……。ちゃんと眠れていますか? 」
「……はい」
「明日からは、各部隊合同での軍事訓練も始まりますし、今日はもう上がって下さい……。しっかり休んで、明日はこのようなことがないように体調を整えてきて下さいね」
「……はい、申し訳ありませんでした……」
青舜にもう一度、頭を下げて謝るとハイリアは、稽古場を後にした。
── 何をやっているんだろう……。
廊下を歩きながら、ため息をついた。
いくらあの呂斎が気に食わない人物だったとしても、やってはいけないことだった。
怒りに呑み込まれて剣を振うなんて、どうかしている。
口汚い悪態をつかれたあと、一瞬、身体の感覚が変になった。
何かがまとわりついたような感覚がして、気づいたら呂斎の喉元に剣を押し付けていた。
青舜に止められていなかったらと思うと恐ろしい。
── どうしたんだろう、私……。
浮かない気分のまま、ジュダルの部屋の前についてしまった。
こんな気持ちのまま、ジュダルを起こすのだと思うとなんだか嫌だった。
胸の奥がズキズキと痛む。
棘のようなものがいつまでたっても消えてくれない。
── ああ、でも、気づかれないようにしなきゃ……!
気持ちを切り替えるように何度か深呼吸すると、ハイリアは勢いよく扉を開いた。