第22章 緋色の夢 〔Ⅶ〕
「み、に、や、ど、る、あ、ん、こ、く、を、し、め、せ……」
── 身に宿る暗黒を示せ……。
だから扉は昨日、開かなかったのだ。
考えてみれば、彼らはみんな漆黒のルフを宿しているのだから、当然なのかもしれない。
黒いルフを持つ者だけが通れる扉。なぜ気づけなかったのだろうか。
「なんでこんな嘘をついたの? 私をこの先に進ませたくないから? 」
袖をまくってじろりと睨み見た、金属器に浮き出ていた金色の瞳が見開かれて固まった。
『……申し訳ありません。おっしゃる通りです』
「余計なことをしないでほしいわ。何を探ろうと、私の勝手でしょ? 」
『しかし……! 』
「そんなに言うなら、黒いルフについて教えてよ? 何か知っているの? 」
『それは……』
瞳を揺らめかせて黙り込んだアイムを見て、ハイリアはため息をついた。
「言えないなら、何も言って来ないで。私はこの先が知りたいの。知らなきゃ、いけないのよ……! 」
胸に湧き上がる黒い感情が疼くのを感じながら、白く大きな扉を睨み付けた。
確かめずにはいられない。
自分の過去に関わり、宮廷に渦巻く闇の正体であろう黒いルフが何か知らなければ、すべてを疑いそうで。
黒いルフに包まれた彼らは、この先でいったい何をしているのだろうか。
もしも、彼らが故郷を滅ぼしたあの女とも深く関係しているのだとしたら……。
ジュダルを思い出して、胸が痛んだ。
── 違うよね……? だって、あなたは私を迷宮から助けてくれて……。
気持ちが焦ってしまうのは、彼が違うのだと、早く確かめたいからなのかもしれない。