第22章 緋色の夢　〔Ⅶ〕

「俺から目を逸らすんじゃねーよ。また、馬鹿げたこと言って泣き出したら許さねーからな」

赤い瞳はどこか威圧的で目が離せなくなる。

落ち着かない感情が芽生えて、鼓動が高鳴っていた。

うっすらと笑みを浮かべ、唇を重ね合わせてきたジュダルを感じて目を閉じた。

熱い温もりに鼓動が落ち着かないのに、柔らかな感触が心地よくて、甘さに酔い、おかしな気分になる。

どこか苦しくて痛いのは、ジュダルの表情が少し寂しげに見えたからだろうか、それとも彼に罪悪感を覚えるからだろうか。

背徳感を覚える二回目のキスは、とても優しいのに胸の奥を締め付けた。

「怒らねーんだな……」

目を開くと、意外そうな顔をしてジュダルがこちらを見つめていた。

いつの間にか彼を受け入れてしまっていることに気づいて、ハイリアは頬が赤らむのを感じた。

「怒らないわ……」

──　もう、きっとどうにもできないのよ、この気持ちは。

気づいたとたん、自分でもよくわからないくらいに膨れ上がってしまった熱い思いは、上手く抑えられなくて。

流されるまま、口づけを交わしたことが正しいかはわからないけれど、拒否しようとは思えなかった。

「ちゃんと側にいるから。だから、ジュダルも私を避けたりしないでよ……。側にいろって言ったのは、あなたでしょ？　」

「そうだったな……」

薄く笑みを浮かべたジュダルは、やっぱりどこか寂しげだ。

彼が何か隠しているのはわかっている。

本当は話してほしい。ジュダルが寂しそうにしていると、胸が張り裂けそうで辛いから。

──　でも、私がそんなこと言えない……。

側にいれば笑ってくれるだろうか。

このまま側にいたいと思うことは間違っているのだろうか。

「ねぇ、ジュダル……」

──　私、あなたのことがね……。

熱い思いがこみ上げてきて、ジュダルを見つめたけれど、声が出ない。

「……なんだよ？　」

こちらを見つめてくる赤い眼差しは優しくて、やっぱり伝えることは許されない気がした。

──　だめだね……。こんな自分勝手な私の気持ち、あなたに言えない。

「なんでもない……。側にいて」

──　話してくれないならそれでもいい。側にいるから。だからそんな寂しそうな顔はしないでほしい。

言葉にできない思いを抱き込むように、腕を伸ばしてジュダルの身体を抱き寄せた。