第22章 緋色の夢 〔Ⅶ〕
ハイリアがうっすらと目を開けると、そこは薄暗い場所だった。
頬に触れている真っ白なシーツがぼんやりと視界に見えて、何となくどこにいるかを把握した。
── ああ、やっぱり……、眠っちゃったんだ……。
身体が温かく、重く感じたのは柔らかな寝台に埋もれていたせいだったのだろう。また、ジュダルに運んでもらってしまったらしい。
泣き疲れて眠ってしまったなんて、子どものようだ。きっと随分と眠ってしまったはずだ。
いったい今は何時なのだろうか。辺りが暗いから、もう夜なのかもしれない。
聞こえる雨音だけが、まだ雨が降り続いていることを教えてくれていた。
── あとでジュダルにお礼を、言わなきゃ……?
そう思いながら動かした目線の先に肌色が見え、ハイリアは目を丸くした。
それがジュダルの寝顔だとわかり困惑する。
いつの間にか、彼と対面するように身体を丸くして横になっていた。
重みを感じていたのは彼の腕で、自分の身体を抱き込むようにしてジュダルは眠っているようだった。
── うそ、どうしよう……!?
どう対処していいかわからずに頬が一気に火照っていった。
動いたら気持ちよさそうに眠っている彼まで起こしてしまいそうで、動くに動けない。
どうしたら良いのかと戸惑っていると、ゆっくりと彼の瞼が開かれて、ハイリアは固まった。
「やっと起きたかよ? ほんとによく眠るよなぁ、おまえは。待ちくたびれたぜ」
赤い双眸がこちらを見据え、薄く笑みを浮かべたジュダルにドキリとする。
起きていたらしい彼と目を合わせているのが落ち着かなくて、ハイリアは目を逸らした。
「ここ、どこ? 私、寝ちゃって……」
「俺の部屋だ。さすがに泣きながら寄りかかって寝始めたやつを見たのは、俺も初めてだったけどな」
「悪かったわね……」
「それにしても、まだ目が腫れてるんじゃねーか? 」
「あんまり見ないでよ……」
目がまだ赤らんで腫れていると思うと恥ずかしかった。
ジュダルの寝台に寝ているのだと思うと、なんだかそわそわして、自然と少しずつ彼から離れようとしていた身体に気づかれて、肩を引き寄せられた。
「そう離れるなよ。ちゃんとこっちを見ろ、ハイリア」
ぐいっと顎を引き上げられて、悪戯な笑みを浮かべるジュダルと目が合わさった。