第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
皇帝との謁見をすませたジュダルは、椅子に腰かけながら窓枠に肘をつき、まだ降り注いでいる雨を見つめていた。
厚い雲のせいで薄暗く見える景色は、霧がかったようにぼやけているくせに、遠くにある満開の花だけが白く映えている。
どこに視線を向けても視界に入る白い花に苛立ち、ジュダルは顔をしかめた。
── つまんねぇーな……。
退屈すぎてイライラする。
一人で過ごすことには慣れていたはずなのに、面白いことが見つけられない。
気晴らしに誰かをからかいに行ければいいのに、戦争の準備に忙しい紅炎たちは、今日も軍事会議で話す暇さえない。
こんな雨の中、どこかへ出掛ける気にもならない。
面白味のない時間だけが過ぎていく。
豚みたいな皇帝との面倒で長ったらしい謁見の時間すら、気分が紛れると感じたくらいだ。
ハイリアが側にいないだけで、ここまでつまらなくなるとは思わなかった。
これ以上あいつの側にいたら、あの心地よさを手放せなくなりそうだというのに、姿が見えないだけで苛立っている自分に呆れてしまう。
距離を置けば、少しはマシになるかと思った煩わしいような胸の疼きは、いつまでたっても消えやしない。
── いっそ壊しちまおうか……?
それがいいかもしれない。
あいつを滅茶苦茶に壊して、真っ黒に染め上げたら、このどうしようもない気分も晴れるのではないだろうか。
「早く出て行ってくれませんか? 」
苛立った声が聞こえて振り返ると、不機嫌な顔をした白龍が立っていた。
そういえばこいつの部屋だったと思い出して、ジュダルは笑みを浮かべた。