第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
どの感情からも、もう逃げられないのだと悟った。
漆黒のルフがもつ秘密を探りたいという溺れるような欲求からも、それをジュダルに知られたくないという傲慢な願いからも、寂しげな表情を浮かべていたジュダルの側にいてあげたいという自分の思いからも。
── もう、嘘をつき続けるしかないんだわ……。
絶望的な選択しかできないことに気づいて、涙が溢れた。
自分がこんなに愚かな考えの持ち主だとは思わなかった。
もどかしい熱い思いと、どうにもできない苦しみが入り混じって、息苦しい。
── 気づかなきゃ良かった。こんなにつらいなら……!
目を逸らしたくなる胸の痛みをかき消すように強く目を閉じると、絞り出された涙がまた一つ、ハイリアの頬を伝って落ちていった。