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【マギ*】 暁の月桂

第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕


「気づくのが遅すぎるわぁ! なんで私が言わなきゃ気づかないのよぉ!? ジュダルちゃんの気持ちなんて、ハイリアちゃん以外、み~んな知っているわよぉ! 」

「うそ!? 」

思わずハイリアは声を張り上げた。

「当たり前よ! あんな見ているこっちが恥ずかしくなるようなわかりやすい行動されていて、気づかないハイリアちゃんの方がどうかしているわよぉ!
 ジュダルちゃんは、昔から気持ちを伝えるのがあまり上手な子じゃないんだから! 」

── じゃあ、今まで側にいるたびに抱き寄せてきたのも、離れないのも、連れまわしてきたのも……。

それが全て好意によるものだったのだと気づいたとたん、恥ずかしくてたまらなくなった。

「そんな……、困るよ、私! 」

「何が困るのよぉ! ハイリアちゃんだって『銀行屋』ごときに嫉妬するくらい、ジュダルちゃんのことが気になっているじゃない! ジュダルちゃんのことが好きなんでしょう?! 」

「私が!? 」

「なんでそこで固まるの?! いったいどうしたら、そんなに恋に鈍くいられるのよぉ!? 」

「だって、恋っていうのは……、もっとズキューンときてバキューンじゃないの!? 」

「何なの、その擬音は?! 」

「だって、師匠たちが! 恋っていうのは衝撃的だからすぐにわかるって!! 矢に射抜かれたみたいだとか……!
 虎に睨まれた焦燥感に似ているとか、盗賊を打ち倒すような高揚感があるとか、ギャンブルでのディーラーとの駆け引きのようだとか……! 」

「途中から何かおかしいわよぉ?! いったい何を教わったのぉ!? そんな妙な表現は、お願いだから忘れてちょうだい!
 ああ、もう……、なんでハイリアちゃんがこんなに疎いのか、わかったような気がしたわぁ……」

そう言って、紅玉は大きなため息をついた。

「じゃあ、こんなに痛いのが……? 」

少し前から続いている、落ち着かないような胸を締め付けるもどかしさが、紅玉の言う通り「恋」なのだとしたら……。

抱き寄せられて胸が温かくなったのも、鼓動が速まって落ち着かなかったのも、背中を向けて歩き出した彼の姿を見て苦しいほどに胸が痛んだことも……。
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