第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
「よくわからないの! どうしてあんなことになったのか!
私もあの時は、怒りに呑まれていたし……、従者の人がジュダルの側にいるなら、私なんて側にいる必要がないんじゃないかって思っちゃって……、自暴自棄になってジュダルに言っちゃったの!
そしたら、そんなことはないって抱き寄せてきて、それで……、いきなり、キス……されて……! 」
唇に触れた熱い感触を思い出して、頬が火照り、胸が苦しくなったとたん、涙が膝元にポタポタとこぼれ落ち、ハイリアは恥ずかしくて下を向いた。
「……私、ジュダルの気持ちがよくわからない……! 都合よく側にいろって言ったくせに、結局、何も教えてくれないで黙って行っちゃうし……、なんであんなこと!
もう、どうしていいのか、わからなくて……! ただでさえ、自分の気持ちもわからないのに……」
胸が熱くて苦しかった。煩わしいようなもどかしい痛みが胸を締め付けてきて、ワケがわからなくなる。
再び溢れてしまった涙が悔しくて、指で涙を拭っていると、絞り出すような紅玉の小さな声が聞こえた。
「……げん、……づ……さいよ……」
前を向いたとたん、なぜか真っ赤な顔をして紅玉が鋭い視線をこちらに向けていたから、ハイリアは戸惑った。
「いい加減、気づきなさいよぉ! なんでハイリアちゃんは、そんなに鈍感なのぉ!? 」
頬を赤らめた紅玉が、机から身を乗り出すようにして大きく声を張り上げた。
「聞いているこっちが恥ずかしいわぁ! どうしてジュダルちゃんの気持ちを、わかってあげられないのよぉ!? ハイリアちゃんにそこまでしてきた意味を考えなさいよ!
そんなのジュダルちゃんが、ハイリアちゃんのことを、す、す……、すぅ……、好きだからに、決まっているじゃない!! 」
顔を真っ赤にして叫んだ紅玉の勢いに圧倒されて、ハイリアは目を見開いて固まった。
「ジュダルが……、私を、好き……? 」
言いながら紅玉の言葉がだんだんと理解できてきて、ハイリアは赤らんでいた頬を、さらに真っ赤に染め上げた。
困惑した表情で固まっているハイリアを見て、紅玉は赤くなった頬を冷ますように両手で押さえながら、呆れ顔でため息をついた。