第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
「私が『銀行屋』に嫉妬……? なんでそんなこと……」
瞳を揺らめかせて戸惑うハイリアを見て、紅玉は困った様子でため息をついた。
「ねぇ、ハイリアちゃんは、ジュダルちゃんのこと、どう思ってるのぉ? 」
「……どうって、そんなの……、身勝手で、意地悪で、私のことなんて何にも考えて……! 」
「くれなくて」と言いかけて、昨夜、慰めるように特別な場所に連れて行ってくれたジュダルを思い出したとたん、言葉が止まってしまった。
じっと見つめてくる紅玉の視線が、気恥ずかしくて頭が混乱する中、ハイリアは焦って浮かぶ言葉を続けた。
「時々くらいは……、優しいところもあるけど! でも、それは……、私をからかって面白がっているからで……! 言うことなんて、たまにしか聞いてくれないし……!
いつも側から離れてくれなくて……、連れまわして……、困らされてばかりで……! 」
言いながら、だんだんと頬が熱くなっていった。同時に、煩わしいようなもどかしい気持ちが、胸の中に渦巻いて苦しくなる。
赤らんでいるだろう顔を、紅玉に見られていることが恥ずかしくなり、ハイリアは思わず声を張り上げた。
「もう、何なんだろう! なんで、私、ジュダルのことでこんなに悩まなきゃ……! ジュダルといるとおかしくなるの! 恥ずかしいことばっかりしてくるから、落ち着かなくて……。
でもジュダルが側にくるから、逃げたいのに、できなくて、どうしていいかわからなくなるの! 」
真っ赤に顔を染め上げたハイリアを見て、紅玉は呆れ果てた様子で大きなため息をついた。
「そこまでわかっているのに、どうしてハイリアちゃんは、自分の気持ちに気づけないのかしらぁ……? 」
「……私の、気持ち? 」
「そうよ、なんでわからないのよぉ!? こんな話、誰が聞いても気づくわ! ハイリアちゃんが鈍感なだけよぉ! 」
紅玉はそう言って、頬を赤らめた。
「そんなこと言われたってわかんないよ! こんなの初めてで……。ジュダルも、あんなことしてきて……、ますますワケがわからなくなって……! 」
「あんなこと……? 」
じんわりと目に涙を浮かべ始めたハイリアを見て、紅玉は首を傾げた。