第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
思いつめたような顔をして抱き寄せてきた、彼の気持ちはわからない。結局、理由は教えてくれなかった。
それなのに、あんなことをしてきて……。
大事なことを話してくれない彼との溝は何も埋まってないのに、触れる距離だけ近くなってしまった。
隠し事をしているのは、彼だけじゃないのに……。むしろ自分の方がひどいことをしているかもしれないのに……。
思い出したとたん、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
「紅玉ちゃん……、私……、どうしていいか、わかんないよ……! 」
すがりつくように側にいる紅玉の服を掴み寄せて、ハイリアは泣き出した。
胸の痛みが苦しくて、抑えようとしてもしゃくりあげてしまい、涙は流れて止まらなかった。
慰めるように抱き寄せてくれた紅玉が温かくて、余計に涙があふれ出す。
困ったような紅玉のため息が聞こえ、自分と視線を合わせるように座り込んだ彼女と目が合った。
「ハイリアちゃん……、ここじゃあ、何も話せないわ。私のお部屋に行きましょう? 」
柔らかな表情で言った紅玉の手が、冷たくなった手を握りしめた。
溢れる涙のせいで視界がにじむのを感じながら、ハイリアはゆっくりと頷いた。