第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
「……じゃあ、ジュダルにとって私って何なのよ? あなたが不安なときに、悩みも聞けないのが側近なの? あなたが苦しんでいるのを知りながら、見て見ぬふりをしていろっていうの? 」
鋭い眼差しを向けてくるハイリアの目から、とうとう大きな滴が零れ落ちてきた。
その身から陰ったルフが湧き上がり、ジュダルは目を見張った。
「側にいながら、あなたの本当の気持ちもわからないなんて……、私はいったい、何のためにいるのよ! 」
声を張り上げたハイリアのルフの陰りが、じわじわと深まっていく。
広がりをみせる黒が浸食する勢いは速い。
── やめろ! 今はまだ……!
「本当は、従者の人たちがいれば十分なんじゃないの? 私が側にいる必要なんてないんじゃないの? 」
「っんなわけねーだろ! 」
強く身体を抱き寄せたとたん、涙を溢れさせるハイリアの手からマゴイが放たれた。乱れ刺すような鋭い痛みに、思わず手を離しそうになる。
「誤魔化さないでよ! ジュダルが悩みも打ち明けられないような、私なんて、いらないんじゃ……! 」
声を震わせて、ハイリアが言った。
── ふざけたこと言いやがって!
今にも黒に変わりそうなルフに焦り、引き寄せたハイリアの頬に手を添えると、ジュダルは唇を重ね合わせた。
驚き、顔を背けようとしてきたハイリアを押さえつけ、少し開いた柔らかな口元に舌を差し込み、逃げ出した熱い物を絡め取る。
さらに深く口づけをかわして、逃さないように吸い付いてやると、ようやく肩を押しのけ抵抗を示していたハイリアから、力が抜けていった。
大人しくなった身体を抱き寄せ、腕に抱き込んだ温もりを確かめた。
熱を奪い合うように乱れて絡む舌はつながり、隙間から漏れ出す喘ぐような吐息を肌に感じて、いつの間にか犯しているような気分になってくる。
漏れる熱い吐息の先で絡みつく、ぬめりのある感触は、熟れた桃を頬張っているようだった。
甘い香りさえ匂い立ってきそうな柔らかさに、気づけば何度もしゃぶりついていた。
聞こえる水面を弾くような水音に溺れそうだ。
抑えがきかなくなってきそうな情欲を感じて、舌先を絡めながらゆっくりと唇を離すと、ハイリアの顔は真っ赤に染まりきっていた。
どこか艶めいた瞳で、困惑しながらこちらを見つめている。