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【マギ*】 暁の月桂

第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕


── なんだこの手……? 

人の手にしては小さすぎる大きさに戸惑っていると、「あー、うー」という言葉になっていない声が聞こえてきた。

── 赤子なのか?

白い手をした赤子は、伸ばしたその手に近づいた白いルフが触れるなり、その羽根を握りしめて自分の方へと引き寄せた。

無造作に羽を握りしめられた白いルフは、ピィーピィーと鳴き声を上げたが、赤子はそれが面白いのか、ルフを振り回しながら「きゃっ、きゃっ」と笑う声を上げている。

『まあーた、おまえさんはそうやってルフで遊びおって……、困った子じゃあ』

側で低くしゃがれた笑い声が聞こえたから驚いた。

すぐに年老いた女の顔が視界に大きく映り、しわだらけの大きな手が、赤子が握りしめている白いルフを取っていった。

── 誰だ? この婆さん……?

ルフが老婆に奪われたとたん、機嫌を損ねた赤子が泣き叫ぶ声が響いてきた。

耳につくような騒々しい声に苛立ちを覚えていると、急に老婆の手に引き寄せられ、景色がぐるぐると一変した。

どうやら抱きかかえられたらしい。

老婆はゆりかごのように揺すり動かしているようで、ぼやけた視界がゆらゆらと動く。

徐々に、泣き止み始めた赤子の視界がはっきりとしてくると、目の前に緑豊かな村の情景が広がった。

木々に囲まれた山の中にあるどこかの村は、わりと高地にあるのか山に作られた段々畑が、いくつも見える。

村のあちこちにみられる民家のつくりは、煌の建造物と変わらない。

── 煌……、なのか?

妙に現実味のある景色に、違和感を覚えた。これは本当に、夢なのだろうか。

『おまえさんは、いったいどこから来たのかのう……? 』

身体をゆらゆらと揺られる中、老婆の声が聞こえた。
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