第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
気がついた時には、ぼんやりとした青いものが視界いっぱいに広がっていた。
── 空か? こんなもん見てたってつまんねーよ……。
そう思い、視線を別に向けようとするのだがちっとも動かなかった。
身体が思う通りにきかない。見るものが固定されているような感じだ。
── 何なんだ? どこだよ、ここは?
無理矢理、動こうとしてもぴくりとも変わらない状況に、ジュダルは抵抗をやめた。
といっても、どうも身体の感覚がない。これには覚えがある。
── まさか、夢か?
知った浮遊感に、面倒くさい気持ちになった。
夢なんてろくなものを見た覚えがない。さっさと目覚めてしまったほうがいい。
ジュダルは目を開けようと強く意識したが、どうもいつものように上手くいかなかった。いつまでたっても、景色は遠ざかっていかない。
── めんどくせぇーな……。
仕方なくつまらないただの青空を眺めていると、側に白いものが一つ飛んできた。
何かと思えばルフだった。不思議なことに、やけに大きく見える。
いつもは片手に収まるくらいの大きさだというのに、目の前のルフは両手で掴んでも収まりきらないほどの大きさだ。
大きな白いルフは、なぜかこちらを珍しそうにじっと見ながら、側で羽ばたきを繰り返した。
── 鬱陶しいな、どっかいけよ。
手で払いのけようとしたが、全く動かせない身体のせいでルフに触れることはできなかった。
自由にならない体に嫌気がさし、ため息をついた時、視界に別の白いものが現れたから驚いた。
何かと思えば丸っこい手だった。
ルフよりも明らかに小さいその手は、どうみても自分が伸ばしているようにしか見えないのだが、手を動かしている感覚はやはりない。
白く小さな手は、握りしめてしまう短い指を懸命に開きながら、ルフに向かってまっすぐに腕を伸ばしている。