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【マギ*】 暁の月桂

第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕


久しぶりに朝議に姿を現した、この国の皇后でもある玉艶は、面白いものでも見るような目で、こちらを見下ろしていた。

「珍しいわね、あなたがそんなにごねるなんて。あの王の器を堕転させるのがそんなに不服? ああいう、可愛らしい子が好みだったとは知らなかったけれど」

「なんだよ、見に行ったのかよ……」

じろりと睨み付けると、玉艶は口元をつり上げた。

「あら、だって宮廷の皆がそろって噂するんだもの。気になる子を見に行ってはいけないのかしら?
 少し確かめたいことがあったのよ。昨日会って、やっと気がかりに感じていた答えがわかったわ。あの王の器、『十年計画』の一人なのよ」

「なんと!? あの計画の!? 」

「まさか、今ごろになって……」

玉艶の言葉を聞いた親父どもが、急にどよめき出した。

『十年計画』という聞き覚えのない用語を、口々に言いながらざわめく広間の空気に戸惑った。

「どういうことだよ、玉艶? 」

「そうね、あの頃はあなたも小さかったから、あの計画を知るわけがないわね。十数年前に、私たちが暗黒を作り上げるために始めた実験計画があったのよ。
 各地から選別した子どもに堕転しうる恨みの種を与え、十年の時を待ち、回収した実験体の身に宿る恨みを開花させる。人工的に黒き器を作り上げる生体実験。それが『十年計画』と呼ばれたもの。
 あの子は、その被験体の一人よ」

「なんだよ、それ……。あいつが被験体? 」

「そうよ、あの子は二十三番目の被験体。恐らく、回収できずにいたロストナンバーの一人だわ。
 宮廷に真っ白な子が来たと聞いて、ずっと気になってはいたのよ。どこかでそういう子に出会ったことがあるような感覚が、頭に残って消えなかったから。
 中々、あの子に会いに行けなかったけれど、ようやく昨日それが何かわかったわ。まさか、『十年計画』の被験体だとは、思いもしなかったけれどね」

そう言って、玉艶はくすりと笑った。

「さっぱりわかんねーよ。なんであいつが、おまえらの被験体だってわかるんだ……? 」

「『十年計画』の被験体は、ルフに印が刻み込まれているのよ。あの子のルフには、ちゃんと印があった。私がつけた八芒星と『23』の数字がね」
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