第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
── さっさと終わらねぇーかな……。
親父どもが繰り返す、面白味のない話のせいで、眠気がピークに達してきた。
国の情勢だの、研究の結果だの、そんなものはどうでもいい。
眠さにだんだんと前のめりになっていく身体を起こし、椅子に深く腰掛けてみたが、眠気はあまり変わらなかった。
早く宮廷に帰って、温かくて柔らかいハイリアを抱き寄せでもして眠ってしまいたい。
抱き心地が良い、あいつの側なら、いつも気分が悪くなる儀式の後でも、よく眠れるはずだ。
あいつは怒るだろうが、昨夜、途中で約束も守れずに眠ったのだから、言いくるめて絶対に大人しくさせてやろう。
うつら、うつらとし始めたジュダルの耳に、強い口調で言う男の声が響いてきて、ぼんやりと重い瞼を開くと、いつの間にか親父どもの視線が、自分へ集中していた。
「聞いておりますかな、『マギ』よ? 」
どうやら何か答えを求められているようだった。
適当に相づちをして、どうにかなる空気ではない。
── めんどくせぇーな……。何言ってきたんだ?
「わりぃー、聞いてなかった……」
出そうになった欠伸を噛みしめて誤魔化すと、覆面の男たちのため息が聞こえた。
「また、でございますか……、少しは集中してくださいませ。貴方様にも関係がある、議題でございますのに……」
「そうですとも、『マギ』よ。……では、もう一度、聞かせていただきますぞ。黒き王の器はどうなっておりますかな? 堕転は進んでいるのですかな? 」
── また、その話題か……。
嫌な話題に変わっていることがわかり、ジュダルは顔をしかめた。
「だから、あいつのことは俺にまかせておけって言っただろ? 同じことを何度も言わせるな」
言えば、親父どもの鋭い視線が一気に降りかかってきた。