第21章 緋色の夢 〔Ⅵ〕
大きな八芒星が中心に鎮座する円形の広間には、星を取り囲むように大勢の従者らが集まっていた。
毎朝、行われる会議の内容は、今日もひどくつまらない。
広間の一席に座り、眠気に耐えていたジュダルは、堪えきれずに大きな欠伸をした。
ただでさえ、昨夜ハイリアを連れて出かけたせいで、かなり眠いのだ。
眠ればあとで、小うるさいことを散々言われるのがわかっているから耐えているが、だいぶ親父どもの声が遠くぼやけて聞こえる。
「我が国の極東平原への進行準備は、順調らしいですな」
「はい、あそこが煌帝国に下るのは、時間の問題でしょう。あそこに我らにかなうような力は、ありませんからね」
「極東が確実となれば、次は北西か西南でしょうか? 陛下は西へ侵攻するおつもりでしょう? 」
「西南諸国へなら、もう手は回っておりますぞ」
「はあ、どこへ? 」
「バルバッドですよ」
「ああ、マルッキオさんが行かれたところですか。あの場所はどうなのですか? 」
「順調ですよ。あそこは良い暗黒の地となりそうです」
「それは良いことですね。我らが父もお喜びでしょう」
「では、次はどうしましょうか……」
「やはり、新たな黒き器を得る必要がございましょう。我らの黒いジンは、安定しておりませぬ。早く良い被験体が欲しいものですなあ」
「西方の村で行った実験も、上手くいきませんでしたし……」
「結局あれも、不完全体の失敗作でしたからねぇ……」
「ああ、そういえば……、チーシャンに黒き器となりうる原石がいたはずでは? 」
「幼少期から我らの教育を受けた男のことですね。期待できましょうか? あの迷宮で死んだ、軟弱な男の二の舞にはなりませんか? 」
「迷宮で死んだ……? ああ、あの黒き器のなりそこないですか……、すっかり忘れていましたよ。あの男より良い器は手に入りましたからね」
「確かにどう育っているかはわかりませんが、一度、見に行ってみる価値はありましょう」
「黒き器となれなくても、またジンの実験に使えばいいですからねぇ。我らの金属器の完成に役立つのであれば、手に入るものは使いませんと」
「まあ、それも半年ほど先の約束ですから……」