第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
「なに、あの光……!? 」
「すっげーだろ? もっと近くまで行くぞ! 」
ジュダルが言ったとたん、体がふわりと浮かび上がったような感覚が走り、絨毯が勢いよく下降しはじめた。
加速しはじめた絨毯のスピードに、思わず身を縮ませた。
「ジュダル! はやい! 」
「少しなんだから我慢しろよ! 」
ジュダルは抑えるどころか、さらにスピードを上げてきた。
急激に落下するような感覚に、恐くなって叫べばジュダルに強く抱き寄せられた。
頭がくらくらとしてきた頃、ようやく絨毯の動きがゆるやかになり、気づけばさざ波の音がしていた。
潮の香りもない波の音を、不思議に思いながら前を見れば、絨毯はつややかな漆黒の水面の上に浮かんでいた。
白い月と、夜空を対面させて映し出しているつややかな水面で、さきほど見た青い光が長い尾を引きながら広がり輝いていた。
黒い光沢のように見えていたものは、湖だったのだ。
岸に程近い、波打ち際で強く輝く幻想的な青い光は、淡い色の帯をすぐ側で作り上げていた。
青い光の帯が、波で水面が動くたびに色めき揺らめいている。
映り込んだ星空の合間から湧き上がった蛍火のような光は、青くきらめいていて、段々と色を淡くして消えていく。
儚く消えては、また光を灯して揺らめきだす青の光が止むことはなかった。
―― なにこれ、すごく綺麗……。
複雑に変化をみせる幻想的な光に、思わず見とれてしまった。
「夜光虫ってやつだ。ここはそういうのが溜まりやすいみたいでよー、夜になるといつも光ってるんだ。すっげーだろ? 」