第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
「これでもおまえには、かなりわきまえてやってるつもりだぜ? おまえが考えているようなことをするつもりなら、もうとっくにやってんだよ。ちゃんとわかってんのか? 」
「……じゃあ、急に抱きついてくるのもやめてよ」
「いやだね」
「なんでよ!? 」
「おまえ、あったかくて抱き心地がいいんだよ」
恥ずかしげもなく言われたから困る。
怒りたいのに優しい眼差しを向けられていて、なんだかいつもと雰囲気が違うせいで、うまく怒れなかった。
「……なにそれ。私、クッションでも、枕でもないんだけど……」
胸の中で揺れ動く波が落ち着かないのを感じながら、頬と膨らませれば、ジュダルは目の前に手を差しだしてきた。
「ついて来いよ、ハイリア。おまえに見せたいものがあるんだ」
柔らかく微笑んだジュダルに、照れくさいような気持ちになる。
いつも意地悪で、強引なくせに、時々こうやって優しく手を差し伸べてくるから困ってしまう。
迷いながら彼の大きな手を取ると、ぎゅっと握られて温かさに包まれた。
胸の鼓動が騒がしくなったのを感じながら立ち上がると、嬉しそうに笑顔を浮かべるジュダルに手を引かれ、暗い部屋の外へと連れ出された。