第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
「え……? じゅーたん? 」
急にぽかんとしはじめたハイリアをみて、ジュダルも戸惑っていた。
「おまえ……、わかってなかったのか?! 出掛けるから、わざわざ迎えに来てやったんじゃねーか! 」
「え? じゃあ……、今夜一晩付き合えって……、そういうこと!? 」
「そうだよ。今から行く場所が、出掛けて帰ってくるのに一晩かかるんだよ! いったいおまえ、何だと思ってたんだ? 」
呆れながらジュダルに言われて、的外れな考えに至っていた自分に気づく。
勝手にそういう考えになって発言していた自分が恥ずかしくて、顔から火が出るかと思った。
怪訝そうな顔つきでこちらを見ていたジュダルだったが、真っ赤に染まっただろう異変で勘付かれたらしく、徐々に面白いものでも見るような表情に変わってきたから戸惑った。
「へぇ~……、なんだよ。もしかして、そっちの方がよかったのかー? 」
にやにやと笑われて、知られてしまったことがわかった瞬間、恥ずかしすぎて、この場から消えてしまいたい衝動に駆られた。
「知らない、しらない! もうヤダ、ほっといて! 」
もう、まともにジュダルの顔を見ることができなくて、ハイリアは真っ赤に染まった顔を隠すように、その場に座り込んで縮こまった。
「何がほっといてだ? 今夜はおまえに拒否権なんてねーんだよ。うずくまってねーで、さっさと立ちやがれ! 」
強引に腕を引かれたが、足に力を入れて堪えた。膝に顔をうずめながら首を横に振る。
意地でも動きたくなかった。恥ずかしさに涙まで出てきていて、顔なんて見られたくなかった。
「立て、ハイリア! 」
「やだ! 」
「ふざけるな! ルール違反だぞ! 」
「そんなの、もう知らない! 」
「……また我がままかよ? ほんと、めんどくせぇーやつだな……」
ジュダルの溜息が聞こえ、掴まれていた腕がふいに放された。
膝を抱え込んでうずくまった側で、足音と服がすれる音の気配がした。
すぐ側にジュダルが座り込んだみたいだった。