第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
「なんだその声? 化け物でも見たような顔しやがって……。こんな暗い部屋の隅で何やってんだ、おまえは? 」
「う、うるさいわね! なんでノックもしないで入ってきてるのよ!? 」
「あんまり暗いから、いねーのかと思ったんだよ! ほら、行くぞ! 約束通り、おまえには朝まで付き合ってもらうからな! 」
ジュダルに腕をぐいと引かれて、頭の中がパニックになった。
「ま、まって、待って! ちょっと、待って!! 」
引きずられそうになる足に力を入れて、ハイリアは堪えた。
「っんだよ!? 往生際が悪い奴だな! 敗者は口答え出来ねーはずだぜ? 」
「だって、まだ心の準備が……! 」
「馬鹿なこと言ってるんじゃねーよ。経験ねぇわけじゃあるまいし……」
ジュダルが力任せにぐいぐいと引っぱった。ずりずりと体が引きずられたから焦る。
「ないってば! ないから困ってるんでしょ! 」
かーっと顔が急激に熱くなり、どうしようもなく恥ずかしくなる。
「ああ?! あんなもん、ぶっ飛んでるうちにすぐ慣れるから大丈夫だろ! 」
なんでそんなに浅はかな発言ができるのだ。
「バカ言わないで! そんなに単純なものじゃないわよー!! 」
「ぐちぐちうるせぇー奴だな……。そんなに恐いなら、おまえからゆっくり上に乗ればいいだろ? 」
「な、なにいってんの……!? 信じらんない! 」
「他にどうしろってんだ!? 俺が抱え込めばいいのか?! 」
「そういう問題じゃないでしょ! もうやだ! 絶対行かない! 」
真っ赤な顔してハイリアは声を張り上げた。
「ふざけんなっ! さっきからワケのわからねー我がままばっか言いやがって! 絨毯に乗るくらいでギャーギャー騒いでガキなのか、おまえは!? 」
ジュダルがイライラと言い放った言葉に、ハイリアは唖然とした。