第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
よく混ざったカードの束に、静かに願掛けをした。
ゆっくりと深呼吸をして覚悟を決めると、ハイリアはカードを配りはじめた。
順々にカードを五枚ずつ配り、中心に山札を置く。
「さーて、運試しだハイリア! 」
楽しげな笑みを浮かべたジュダルが手札を手に取ったのをみて、ハイリアも五枚のカードを手に取った。
騒がしくなる鼓動を感じながら、手札となった五枚のカードを見る。
手札のカードは、スペードのA、ダイヤのA、ハートの6、クラブの6、ダイヤの10。
ツーペアだ。
カードチェンジをどうしようかと悩む。とりあえず揃ってはいるが、役は弱い。ジュダルはどうする気だろうか。
手札を眺めているジュダルに視線を移すと、目が合った。
にやりと笑われてどきりとした。
「俺は、二枚カードチェンジする。おまえは? 」
三枚手元に残すと言うことは、ジュダルはスリーカード以上を持っている可能性が高い。
このままの手では負けるかもしれない。やはり山札のカードに賭けるしかないようだ。
「私は、一枚カードチェンジするわ」
手札のダイヤの10を捨て、山札から一枚取った。
手札にカードを入れた瞬間、スペードの6が見えて、嬉しくて舞い上がりそうになったけれど、盛り上がる気持ちを抑え込んで隠した。
手札のよしあしを悟られては駄目だ。
とはいえ、フルハウスだ。
よほど強い役が来ない限り、恐らくこれは勝てる。
ジュダルは手札から二枚捨て、山札から二枚を取り直していた。
彼に何の手が来ているのかは、表情からはさすがに読み取れない。
こちらの視線に気づいたジュダルは、不敵な笑みを浮かべた。
「どうする? フォールドするか? 」
「ふざけないで! ベットよ! 」
「なら、コールだ! 」
―― 勝負!!
勢いよく揃って、手札を床に叩きつけた。