第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
完全にからかわれて、弄ばれているのだと思うと苛立ちが募った。
ジュダルの意に反ってしまいたいが、そうすればジュダルは本当に、好き勝手に自分をいじってくることが目に見えている。
答えなんて始めから決められているようなものだった。
「……やるわよ。やればいいんでしょ! 」
ほとんど投げやりに言い放つと、ジュダルはにんまりと口元をつり上げて、覆い被さっていた体からようやく離れてくれた。
「いい選択だぜ、ハイリア。じゃー始めようぜ! 」
火照る頬を押さえ、落ち着きなく机から起きあがれば、ジュダルが手を差しだしていた。
仕方なくその手を取り、腕を引かれて誘導されるまま、ハイリアはジュダルと対面するように床に座り込んだ。
にやりと笑うジュダルが、懐から取り出してみせたカードの束は、見た目はよくある、ただのトランプカードだった。
「それ、イカサマはないんでしょうね? 」
疑いの眼差しを向ければ、ジュダルは持っていたカードを差し出した。
「安心しろよ、ただのカードだ。気になるなら見てみろよ」
トランプを受け取り、仕掛けが施されていないか一枚ずつ触れてみたが、違和感はなかった。
確かに普通のトランプカードみたいだ。
「ゲームは何を? 」
「ポーカーだ。やり方はわかるか? 」
ポーカーと聞いて、レームの闘技場近くのカジノで、持ち金の全てを使い果たしていた師匠たちの姿が浮かんで、複雑な気分になった。
あんまり良い思い出がない。
「……一応、知ってはいるわ。
確か、カードを五枚ずつ配って、手札のカードを変えるか決めるのよね。カードを変える場合は、捨てた分のカードの枚数を山札から引く。
手札のカードをみて、勝負をするか決めて、最終的に強いカードの組み合わせを持っていた人が、勝ちってルールだったはず」
「まー、だいたいあってるな。本来はチップを賭けるが今回はそれがねーから、ベッティング・ラウンドも、単純に意思表示を示す場だけになる。
ベットは勝負をしかける、コールは勝負に乗る、フォールドは勝負から降りる、意味だ。
手札の変更は一回のみとする。カードチェンジ後の手札をみて、勝負をどうするか決めろ」