第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
「やだ、離してよ! 」
「いやだね! 」
身動きがとれない状況に焦りを感じた。
覆い被さっているジュダルが、また何かしてきそうで恐いのに、恥ずかしさを感じて頬が熱くなっていく。
両手を押さえ込んで離そうとしないその手に向かって、もう一度、勢いよくマゴイを放ったが、今度は何かに阻まれた。
彼の周りに張られた薄い防壁が見えて、愕然とする。
「何考えてるの!? こういうの嫌だって言ってるでしょ! 」
「何が嫌なんだ、ハイリア~? おまえ、顔が真っ赤だぜ~? 」
わざとらしく言ってくるから腹が立った。
「これ以上、変なことしてきたら……、もう口聞いてやらないから! 」
「この状況でよくそんな強がりが言えるな。おまえの意見を無視することなんてたやすいんだぜ? なんで俺がそうしないか考えたことあるか? 」
こちらを試すような視線に戸惑い、心が揺らいだ。ジュダルが何を考えているのかわからなくなる。
何も言えずに黙り込んで睨み付けると、ジュダルはにんまりと笑みを浮かべた。
「まーいいや、そう好戦的になるなよ。俺とゲームしようぜ、ハイリア」
「……ゲームですって? 」
「そうだ、一発勝負のカードゲームだ。ルールは簡単。勝った方が、負けた奴に一つだけなんでも命令できる。当然、敗者は従うのが絶対条件だ。
どうだ、おもしれぇーゲームだろ? おまえが乗るなら、手を放してやる」
瞳を輝かせながら、ジュダルは楽しげに言った。
「何そのルール!? そんなゲーム、できるわけないでしょ! 」
ゲームのリスクの高さに困惑した。
勝者がなんでも一つ命令できるなんて、どう考えても危ういゲームだ。そんなゲームに乗る気など、普通はおきない。
「恐いか? おまえがやらねぇなら、俺はつまんねーし、このまま少し遊ばせてもらうけどなー! 」
そう言って、ジュダルはわざと耳元に息を吹きかけてきた。
ぞわりとする感覚に、ハイリアは思わず身をよじらせた。
「っんぅ……! それじゃあ、私に選択肢なんてないじゃない! 」
「バーカ、ちゃんとあるだろ? このまま俺に好きにされるか、ゲームに乗って回避するかの二択だ。わざわざ無理強いしないで待ってやってるんだ。選べよ、ハイリア」
楽しげな光を瞳に宿し、ジュダルが言った。