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【マギ*】 暁の月桂

第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕


一人その場に残されて、呆然と立ち尽くした。

心は乱れて、揺らめいていた。

皇子の言葉と、見えた黒く濁ったルフの姿が、頭の中に渦巻いていつまでも消えない。

恨んでいた。白龍は明らかに憎んでいた。

あの組織と、ジュダルと、紅炎たちのことも、そこに関わる自分のことさえ。

―― どうして? なんで!?

胸の奥にしまい込んでいたものが、心を掻き乱して苦しくなった。

『お前がジュダルの抑止力となっている状態は、維持しておきたいからな』

組織の者には気をつけろと警告してきた、紅炎の言葉が胸を締め付けた。

『利用されているとは思わないのですか? あの者達の手駒となっている、あなたのことなど……! 』

この国が異常だと言った白龍の言葉が深く傷を付ける。

皇子たちの言葉で浮かび上がるのは、漆黒のルフをもつ『銀行屋』の姿と、ジュダルの姿で……。

「違う! 違う! 違う! 」

耳を塞いで叫んでも、脳裏に浮かぶ黒い残像は消えてくれない。

胸の奥のわだかまりはいつまでも消えてくれなくて、ハイリアはその場に座り込んで膝を抱えた。

―― そんなはずはない……。そんなはずないんだ……。

ひらひらと目の前に舞い込んできた白いルフが見えて、強く目を閉じた。

真っ白な残像が胸の中をさらに締め付けて、痛くて、抱え込んだ膝をぎゅっと引き寄せた。

何も見たくなんてない。何も考えたくなんてなかった。












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