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【マギ*】 暁の月桂

第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕


「あの……、白龍様も眠れずにここへ来られたのですか? 」

ちらりとこちらへ向いた視線に、妙な緊張感が漂った。

「……どうだっていいじゃないですか。わざわざ、伝えなければいけないのですか? 」

「いえ……、すみません。ただ、白龍様がこんな場所に来られるなんて、珍しいと思ったものですから……」

「それなら、ハイリア殿こそ一人でいるのは珍しいのでは? いつも神官殿に付き添っているあなたでも、一人で出掛けることはあるのですね」

口調が強いわけではなかったけれど、なんだか冷たい物言いに、胸の中が苦しくなった。

なんでこの皇子とは、いつもこんなに距離があるように感じるのだろう。

「私だって……、一人になりたい時くらいありますよ……」

「そうですか……、では、失礼します……」

素っ気なく言って、この場から立ち去ろうとした白龍の姿に、心が乱れた。

苛立ちを覚えた気持ちが、なんだか今日は治まらなくて、気づけば声を張り上げていた。

「……なぜそうやって、いつも私を避けられるのですか?! 」

振り絞るように出された声に、白龍は驚いて振り返っていた。

目を丸くしてこちらを見た皇子に向かって、ハイリアは続けていた。

「私が何かしましたか? 気に障ることでも言いましたか? なぜ白龍様はいつも私と視線を合わせて下さらないのですか!? 
 何かしたなら謝ります。だから言って下さいよ! 何も言われずに無視されることほど辛いものはありません! もう嫌なんです、そういうの! 」

胸の奥から湧き上がってきた激情に、言葉はするすると流れ出ていった。

勢いに呆気にとられたのか、白龍は戸惑ったような表情で黙り込んだが、ハイリアが向ける強い眼差しに対抗するように、すぐに鋭い眼光を向けてきた。

「……あなたに話すことなど何もないですよ」

「どういうことですか!? はっきり言って下さいよ! 」

「では言わせてもらいますが、俺はあなたと関わる気がありません。義兄たちのような付き合いを望まれても困るんです! 」
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