第2章 白夜
そんで
『…ホンマに?』
それが「ホンマに恋とちゃうんやんな」という、確認の意味であることは考えればすぐ分かったのに。
その瞬間、謙也の声が一際大きな黒板の引っ掻き音に聞こえてしまって、俺の中の何かがブチンと音を立てて切れた。
耳にまとわりつく引っ掻き音を引っペがしたい一心か、あるいは今でも曖昧な自分の気持ちに線引きをしたい一心か。
つい、勢いを付けて、あんな言い方をしてしまったのだ。
今振り返っても、自分勝手で横暴で「何やっとんねんお前!」と自分にツッコミを入れたくなる。
流石に言い過ぎたのであの後改めて皆には謝った。
そっからそれなりにやっているけど、最近何となく避けられている…ような気がする。
愛想つかされてもうたかな…なんて、負の思考回路がグルグル回る。
でも、確かに。
この前の自習の事や保健室の事といい、今回の事といい。
俺は、高野さんのことが絡むと感情的になりすぎる節があるように思う。
それで、今回のように皆の気を悪くしてしまうことがあるから、落ち着かないといけないのに。
抑えようとしてるとか、抑えなアカンと思ってるのに…とかいう以前に、理性が働くより先口が動くのだ。
まさか俺、ホンマに高野さんのこと…
俺のすぐ前の席で、一心不乱に板書を移す少女を見て、そんな考えが頭をもたげる。
が、それはほんの一瞬。
次の瞬間には、有り得へんやろ、と笑ってみせていた。
今はそんなことより、皆との間に出来てもうた微妙な亀裂を何とかする事の方を考えな。
他の部活で、恋が原因で部活がモメて…っていう話は聞いたことがある。
全国制覇を目指す四天宝寺テニス部。その部長の俺がそれをしてしまうのだけは、絶対にアカン。
そう。恋愛とかいうモンなんかに、うつつを抜かしとう場合とちゃうんや