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【テニスの王子様】白のコルチカム

第2章 白夜


 真っ白になった頭の中がグルグルと洗濯機みたいに回る。
 表情筋が、錆びたブリキの関節みたいにギシギシ言っているのが分かる。そのままフリーズして電源を切れたら楽なのだろうが

「あの、先輩?」

 とか、不審者でも見る目つきで財前に言われると、夜道で後ろから驚かされた時のように肩が不自然に跳ねた。

「何で急に黙るんすか」
「ちゃっ…ちゃうねん! あ、あれは…別に他意とか下心があってやったんとは…いや、ホンマに! ホンマにそんなんちゃうから!!」
「いや、言うてる意味が分からりませんけど…」
「あっ! せ、せや! 俺…オサムちゃんに呼ばれとったん忘れとった! すまん財前! 俺行くわ!あはははー」

まぁ、呼ばれてへんねんけど。

 何か言おうとすればするほど、上手い言葉が出てこなくて、こっちを見る財前の顔が険しくなっていく。
 二人きりの部室に耐えられなくなった俺は、慌てて踵を返す。
 途中でゴミ箱を蹴倒してしまったり、その中身を捨て直して立ち上がろうとしたら机に頭をぶつけたりと散々だったけれど、どうにか部室を出て、後ろ手でドアを閉める。


 背中に刺さる財前の視線と羞恥心とで耐え切れず、俺は呼ばれてもいない上に用も無い職員室に向かって走り出した。
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