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【テニスの王子様】白のコルチカム

第1章 朧月夜


 鋭いトゲがある言葉に、心拍数がどんどん上がっていく。
 硝子の破片みたいにチクチクした声の直後にチャイムが鳴って、先生の声が教室の空気を緩ませても、私の心臓はまだバクバクと波打っていた。

そうや…庇ってもらって、喜んどう場合ちゃうかった

 そうだ。自分みたいな嫌われ者に対して好意的に接する人間を、周囲の人間が歓迎するわけがない。
 その人のことも…白石くんのことも、皆があることないこと噂を始めるかもしれない。
 私なんかを庇い立てしたせいで…私のせいで、白石くんがこれまで築き上げてきた皆の信頼を壊してしまう。
 白石くんまで一人ぼっちになってしまう。寂しい思いを、辛い思いを、こんな良い人がしなくちゃいけなくなってしまう。それだけは嫌だ。

 何とかしなくては。せめて、この神様のように優しい人に、不運の火の粉が降りかからないようにしなくては。

 強迫観念と焦燥が、蛇のように音もなく近づいてきて私の体に巻きついてくる。

 何とかせな、何とかせな、何とかせな…。蛇がギュウギュウと音を立てて体を締め上げるにつれ、頭の中はどんどん汗でふやけていく。
 そんな私に出来たのは、クラスの誰かが見ている前で、出来るだけ嫌な言葉を白石くんに吐くことだけだった。
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