第12章 殺気【一松】
先ほどほのかに首を絞められた猫の気持ちを確かめるように撫でた。
やはり痛かったみたいだ。かわいそうに…
俺はほのかを睨んだ。
一「あんたには道徳心とか、常識とか、そういうのないわけ?」
「え?…だ、だって…一松さん…猫渡したじゃないですか。」
「臨機応変って言葉わかる?こんな人が多いのに
まず猫を殺せって意味に捉えられる?」
おもわずきつい言葉をかけてしまった。
トド松もめったに見ない俺の饒舌さに驚いて固まっていた。
「…確かに、私にはモラルが備わってないと自分でも自覚しています…」
ほのかの頬に涙が伝う。
そして彼女はモールの通りへと歩き始めて行った。
それを見て俺は我に返った。
泣かせてしまった。
俺は他の兄弟とは違っていつもほのかを泣かせてしまった。
今だってそう。自分の感情や基準に合わせて彼女の目線に立とうとしなかった。
悔しさが一気にこみ上げ俺は唇をかんだ。