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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第35章 誘拐未遂事件/安室


病院の職員用出入口。
予想通り6時13分にさくらさんはそこから姿を現した。
左肩に鞄をかけて、右手には傘。
畳まれたそれを歩調に合わせて僅かに揺らしながら病院の通用門の方へと歩いて行く。

彼女に悟られぬようにそっとその後を追う。
すると視界の端で僕と同じような動きをする影があった。その数3つ。
1人は辺りを不自然なほどに警戒しているし、1人は内ポケットから右手を出そうとしない。残る1人の視線がさくらさんから動いていないことから見ても、この3人がさくらさんを狙っている犯人と見て間違いないだろう。
恐らく2人目の男の内ポケットには何か武器が隠されているはずだ、彼には特に注意しておかなければ。

そうこうしているうちにさくらさんは病院の敷地から出てどんどん人気のない方へと足を進める。
以前に彼女が病院からの帰り道は大通りより細い路地を通った方が近道なのだと言っていたことを思い出す。

1つ角を曲がると通りの様相は一変した。
先程までの閑静な住宅街はどこへやら、スプレーで落書きをされた壁、外壁の剥がれかけたビル、無造作に転がる看板。
お手本のような路地裏がそこにはあった。
この道を使うのはやめさせるべきだったと後悔してももう遅い。

彼女がある廃ビルの前に差し掛かった時、後を尾けていた3人が動きを見せた。
1人が道の真ん中に躍り出たかと思うと、ちょっと待て、とさくらさんを呼び止めた。
「私ですか?」
警戒心の無さそうな顔で彼女は後ろを振り返る。
その隙に残りの2人がさくらさんの進行方向に回り込んだ。

「ちょーっと俺達と一緒に来てもらえるかなぁ?君に用事があるって人がいてねぇ。」
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