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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第35章 誘拐未遂事件/安室


「お断りします。」
はっきりと、確かに彼女は否定の言葉を口にした。
僕も、そして恐らくこの場にいる彼女以外の全員が目を丸くする。
「はあ?テメェ自分の立場分かってモノ言ってる?」
男性の持つナイフがキラリと光を反射する。
行く手を塞ぐ男達もジリジリと距離を詰めてきていた。

「私、この後予定が入ってるんですよね。用事があるなら事前に連絡下さいと、その方にお伝えいただけますか?」
その顔に恐怖や不安などは見当たらない。
むしろ早く帰りたいんだけど、とやや苛立っているようにさえ見える。
そこまで彼女を落ち着かせるものは何なのか、答えはすぐに分かった。

「このアマ、ナメてんじゃねぇぞ!」
ついに痺れを切らしたのか男がナイフを振り上げる。そのままさくらさんへ襲いかかった。
危ない、と身を隠していた建物の陰から飛び出そうとした、その時。
カランと何かが足下へ転がってきた。街灯の僅かな光で鈍く光るそれは先程まで男の手にあったナイフだ。
顔を上げるとそこには右手を押さえて驚愕の色を浮かべる男と、調子を確認するかのように片足でトントンと軽く地面を叩くさくらさんの姿。
彼女の右足でナイフが蹴り飛ばされたのだと理解するのにそう時間はかからなかった。

「な、この女…くそっ冗談じゃねぇ!」
進行方向、つまり今は彼女の背後にいる男が警棒を振り上げる。
さくらさんは今度はそれを振り向きざまに左腕で受けると、がら空きになった男の腹部を右足で蹴り上げた。
男の体が少し宙に浮いたかと思うと、彼は呻き声を上げて路肩に無造作に置かれた古びた電光看板に背中から突っ込む。
ガシャンと派手な音があたりに響いた。
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