第34章 関西弁の少年/服部
「あのね服部くん、」
俯いている彼の肩をポンと叩く。
「私は中立でいたいと思ってるの。これからもコナンくんや哀ちゃんのことも組織に告げ口するつもりはないし。でも警察にタレ込むつもりもない。なぜなら私も逮捕されるのは嫌だから。」
ああでも組織に所属している時点で中立も何もないか、と心の中で自嘲気味に笑った。
ちょっと変わってる人なんだよ、とコナンくんが服部くんに耳打ちをするのが聞こえる。
コナンくん、それ全くフォローになってないからね…。
「あ、そこ、私のマンションだから。ありがとね、送ってくれて。」
「おう、また勉強教えてーや。」
「いつでもどうぞ。私も久しぶりに勉強できて楽しかったよ。」
そう言ってマンションの下でお互いに手を振った。
「コナンくんも、またね。」
マンションの前に着いてから急に静かになった彼に呼びかけてみたが返事がない。
不審に思って見下ろすと、彼の視線は駐車場に注がれていた。
ちょうど私の借りている区画のあたり。今は何も止まってはいないが。
「コナンくん?どうかした?」
しゃがみ込んで顔を覗き込むようにすると、驚いたのか彼は2、3歩後ずさって思いっきり首を振った。
「な、何でもないよ。じゃあねさくらさん、おやすみなさい!」
そう言うと1人でもと来た道を走り出す。
「ちょ、待て工藤!…あ、さくらさん、ほなな!」
慌てて服部くんもその後を追った。ひょこひょこと右足を庇って走るその背中に、気を付けてね、と声をかける。
彼は背中越しに手を挙げると角を曲がって私の視界から消えていった。