第34章 関西弁の少年/服部
「服部くん大丈夫!?」
試合中に怪我をしたと言って救護室を訪れた高校生の右足首に包帯を巻いていると、扉が勢いよく開いた。
彼は扉の方に顔を向けると片手をあげる。
「捻挫やって。いやー迂闊やったわ、踏み込んだ時に変なつき方したんやろうな。」
こら参ったわ、と頭を掻く彼に扉の方からは安堵の息が聞こえた。
「応急処置はしましたが、きちんと掛かりつけの整形外科に診てもらってくださいね。」
「わかったでー姉ちゃん、おおきにな!」
彼が椅子から立ち上がってちょうどその姿で隠れていた入口が見えるようになると、そこには見覚えのあるシルエットが2つ。
「あれ、コナンくんと…蘭ちゃん?」
「さくらさん!どうしてここに?」
「なんや、くど…やのうてコナンくん、この医者の姉ちゃんと知り合いか?」
お互いに目をパチクリとさせる。
まさか偶然、こんなところで会うなんて。
救護担当がうちの病院なんだと言うと、私達は服部くんの試合見に来てたの、と蘭ちゃん。
なるほど、怪我をした彼はコナンくんと蘭ちゃんの友人だったというわけか。
「ほな治療もしてもろたことやし、露店でも見て回ろか。」
これやと残りの試合も欠場せなあかんし、と彼は包帯の巻かれた足をプラプラとさせた。
ああ、折角慣れないなりにテーピングをしてあげたんだ、あまり動かさないで欲しいものだ。
「あ、さくらさんも一緒にどうですか?…って、すみません、お仕事中ですよね。」
反射的に誘ってくれたのだろう。
蘭ちゃんの振り向いた時の笑顔はすぐに引っ込んで、すまなそうな顔になる。
「そう、午後の担当私1人でさ。ごめんね。」
看護師の1人くらいいてくれてもいいと思わない?と同意を求めてみたものの、苦笑で返されてしまった。
くい、と白衣の裾が引っ張られる。
見るとそこには笑顔のコナンくんがいた。
「ねぇ、それならさ」