第34章 関西弁の少年/服部
(関西弁の少年)
「服部くん、頑張ってねー!」
客席から蘭が身を乗り出してアリーナを歩く服部に向かって手を振る。
「おう、任しときー!」
やや距離があるためその表情までは分からないが、声からは余裕が滲んでいる。
「…ったく、何で俺があのボウズの試合なんざ見に来なくちゃならねーんだ。」
対照的に、椅子に深く腰掛けて腕を組んだおっちゃんはつまらなそうにそう呟いた。
俺と蘭とおっちゃんは武道館に来ていた。
きっかけは先週掛かってきた服部からの電話だ。
「次の週末?」
『せや、土曜日に東京の武道館で剣道の試合があってな。もし暇やったらおっちゃんとあの姉ちゃん誘って見に来いや。チャリティーの試合やから露天もぎょーさん出んで!あと何ちゃらってアイドルのミニライブもあったな…あのおっちゃんそういうの好きやろ?ああ、ほんでその日の夜泊めてーな!』
「さてはオメー、最後が本音だな?」
『まあまあええやんけ!ほなチラシFAXしとくさかい、よろしゅーな!』
その晩送られてきたFAXを先に目にしたのはおっちゃんの方で。
「ヨーコちゃんのミニライブ!!?」
目ざとくそれを見つけると、次の瞬間には快く服部を泊めることを許可していた。