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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第33章 禁煙します/ジン


集中が途切れたこの間に、とトイレに立った。
手を洗って戻ってくるとどうも聞きなれない音がする。
カタカタと規則正しく聞こえるそれはテーブルの方からだ。

よく見るとグラスの中の液体が微かに揺れている。
携帯のバイブとも違う振動に首を傾げて周りを見回すと、音の正体はすぐに判明した。
ジンの足だ。
あのジンが所謂貧乏ゆすりをしている。
当の本人は全く無意識なのだろう、腰から上は普段と何ら変わりはない。
いや、いつもよりわずかに眉間の皺が深いだろうか。

「ちょっと、大丈夫!?」
思わずその小刻みに上下する膝に手を乗せた。
「何がだ。」
ジンが顔を上げると同時、足の動きは止まる。

「え、今、足…。」
あまりのショックに言葉がきちんと出てこない。
そんな私に不審そうな視線を投げて、ジンは再び本を開こうとした。
しかしその手はウォッカの言葉で止まることになる。


「兄貴、言いづらいんですが今貧乏ゆすりしてやしたぜ。」
それ、とウォッカはジンの左足を示す。
そんな馬鹿なとジンは鼻で笑ったが、私もウォッカもいたって真面目な顔をしていることに気づいて口を噤んだ。



またトントンと音がする。
今度はジンの指だった。閉じた本の上に乗せられた右手の人差し指がリズミカルに上下している。
これにも自覚はなかったらしい。
私とウォッカの視線の先にある自らの指を見下ろして、慌てて手をポケットへ引っ込めた。

「ジン、もしかしてだけど、煙草吸いたい?」
その問いに否定はされなかった。
再び彼のポケットから取り出された右手には煙草が握られていて。
私が止める間も無くジンはそれに火をつけるとゆっくり紫煙を吐き出した。

呆気に取られる私とウォッカを他所に、ジンは私が棚の上に隠していた灰皿を引き寄せるとトンと灰を落とす。
「俺は一抜けだ。禁煙は1人でやってくれ。」
部屋に充満する煙に、私はがっくりと肩を落とした。
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