第32章 (番外編)初詣
3人には遠慮されたが、お年玉の代わりに、と半ば強引にお兄さんから受け取った紙コップをそれぞれの手に握らせた。
「じゃあ8つで1600円ね!」
財布から百円玉を取り出しながら首を傾げる。
蘭ちゃんたちと少年探偵団のみんなと私、9人いたはずなのだが。
「そういえば、哀ちゃんは一緒じゃないのね?」
蘭ちゃんの声にはっとする。
1人足りないのは哀ちゃんか。
「あー、灰原ならトイレ行ったぜ。」
あっち、とコナンくんが示した先には仮設のトイレが並んでいる。
哀ちゃんなら1人でも大丈夫だろう。
お兄さんに追加で1つ甘酒をお願いして、参道へ向かった。
◻︎
既に参拝は終えたらしい蘭ちゃんたちとは別れると、人混みをかき分けながら哀ちゃんが戻って来た。
「自分ではぐれるなって言ってたのによー。」
唇を尖らせた元太くんの手には空になった紙コップが2つ。
あ、と私が言うより早く歩美ちゃんが指をさした。
「元太くん!それ1つは哀ちゃんの分だったのに!」
驚いた顔の元太くんは、慌てて紙コップを背中に隠したがもう遅い。
「ひどいよ元太くん!」
「あ、いや、だってよ、2つ渡されたから…。」
「普通1人で2つも飲みませんよ?」