第31章 (番外編)大晦日
(大晦日)
「あと1時間で今年も終わるねぇ。」
とりあえず乾杯、と隣に座るジンのグラスに自分のそれをカチリと当てた。
「去年の今頃は1人寂しく年越しだったからさ、今年はジンが来てくれて嬉しい。」
煩いほど窓を叩いていた雨音は気付けばすっかりなりを潜めている。
「来年も、」
こうして過ごせるといいね、と言おうとした言葉はジンの唇で遮られた。
視界が銀で覆われる。
少しの煙草の香りと軽いリップ音を立てて離れたそれに、驚いて目を丸くした。
声も出せずにぱくぱくと口を動かす私に、彼はニヤリと唇を舐めた。
「来年のことを言うと鬼が笑うぜ。」
そう言ってグラスに少しだけ残ったワインを一気に煽ったのだった。
遠くで除夜の鐘の音が聞こえていた。