第1章 Sunflower【澤村大地】
「野村!おい、待てって…!」
「…なによ、何か用…?」
「……俺、さっきの試合見てたよ」
「………やめてよ…」
「え…?」
「やめてよ、慰めとかそういうの…。負けたのが私のミスだって…自分でも、ちゃんと…分かってるんだから」
「…そんなことしねーよ」
そう言った大地が、後ろから数歩近づく気配がした。ビックリした私が離れるより早く、その手が私の頭に触れる。
「お疲れ」
一言だけ呟いて、そっと私の頭を撫でてくれた。壊れやすい大切な物を、傷付けないよう優しく触れるみたいに。
「……な、に…すんのよっ…」
「よく頑張ったな」
「………っ」
ゆっくり滑る、大地の大きな手。
優しいぬくもりと、
心地よいリズム。
私はその手を振り払うことができなかった。
瞬間、涙が堰を切ったように溢れた。抑えられずに声を上げて泣く私に、大地はずっと「お疲れ」と言ってただ側にいてくれた。
それ以来、私の目は無意識に澤村大地を追いかけるようになっていた。大地が烏野高校志望だと聞いて、私も同じ高校にした。バレー部に入ると聞いて、私もバレー部に入部した。ただし、今度はプレイヤーではなく、同じ部のマネージャーとして。