第1章 Sunflower【澤村大地】
「なんだよ大地ぃ〜、抜け駆けかぁ?」
すぐそばでやり取りを聞いていた菅原がはやし立てた。むしろ、大地がそのつもりで声を掛けてくれたならどんなにいいかとさえ思ってしまう。
「そんなんじゃねぇよ!つか、抜け駆けってどーいう意味だよ…!」
「ははは、まぁまぁ!でもさ、あらかた片付けも済んでるし、野村と先に帰ったら?あとは俺らでやっとくから!」
言いながら菅原は、私の方へ意味深な視線を向けてくる。私は心の中を見透かされた気がした。
「ちょ…、変な想像しないでよ菅原!」
「そーだぞスガ!俺は親切心で…!」
「はいはい…。まぁ、とにかく二人は先帰れよ。雨が酷くなってもメンドーだべ?」
私と大地は顔を見合わせた。
観念したように、大地がため息をつく。
「はぁ…んじゃそーするわ、スマンな。野村、悪いけど準備して下駄箱のとこで待っててくれ。俺も着替えたらすぐ行くから」
「わ、分かった…」
私はみんなの好意に甘えて、一人更衣室で着替えを済ませ、玄関に向かった。
弾む心臓の鼓動が聞こえる。
送ってく、ってことは、
同じ傘で、ってことだよね…?